お風呂の豆知識
普段何気なく使っている「お風呂」という言葉ですが、有力な説として「ムロ(室)」という言葉が訛って「フロ」になったと言われています。では、どうして「ムロ」という言葉がお風呂を表すようになったのでしょうか。
「ムロ(室)」という言葉はもともと、洞窟や洞窟のように狭い場所などを意味しています。昔のお風呂は、狭い空間に溜めた蒸気を浴びて身体の汚れをふやかし、こすり落として身体をキレイにするスタイルの蒸し風呂でした。
蒸し風呂は外気を防がなければいけませんが、当時は家にそのような場所を設けることは難しかったため、岩山を掘って「ムロ」を作り、石を積み上げた小さな釜の中で枯葉を焚いて蒸し風呂を楽しんでいたようです。そのため、「ムロ」が「フロ」という言葉のルーツになったと考えられています。
ちなみに、愛媛県今治市などには「石風呂」と呼ばれる昔のスタイルのお風呂が残っています。こちらは天然の洞窟を利用した蒸し風呂です。狭く暗い室内に入って身体を温めるという、昔のお風呂の特徴が表れています。また人工的な蒸し風呂としては、京都市八瀬にある「釜風呂」も有名です。
今のようにお湯につかるスタイルのお風呂は、もともとは蒸し風呂の「風呂」に対して「湯」と呼ばれていました。江戸時代の初期ごろまでは蒸し風呂タイプのお風呂が一般的でしたが、時代が進むにつれて日常生活では見られなくなっていき、「風呂」と「湯」の使い分けが曖昧になって、お湯につかるスタイルが「風呂」と呼ばれるようになりました。
ちなみに、ものを包む布のことを「風呂敷」と呼びますが、これもお風呂文化から生まれた言葉です。
布でものを包むという習慣自体は、古くからありました。しかし、そうした布をまとめて「風呂敷」と呼ぶようになったのは、銭湯が普及した江戸時代ごろからだと言われています。
銭湯では、自分の着替えを布で包んだり、その布を敷物にして身繕いをしたりしていました。お風呂で布を使う機会が増えたことで、その布が「風呂敷」と呼ばれるようになり、やがてものを包む布全般を「風呂敷」と呼ぶようになったと考えられています。
風呂という言葉ひとつにも、古くから続くお風呂の歴史が詰まっています。遠い昔の人々に思いを馳せながら、お風呂に入ってみるのも趣深いですよ。