お風呂の豆知識
銭湯と言えば、壁画いっぱいに描かれた富士山が印象的です。でも、なぜ銭湯に富士山の絵を描くようになったのでしょうか。
銭湯のペンキ絵の発祥は大正元年、"神田猿楽町の「キカイ湯」が増築するにあたり、浴室(流し場)周囲の板壁を生かして何かできないかと考えた結果、背景画を掲げることになったからである" ※というのが通説となっています。
キカイ湯はすでに廃業していますが、跡地に残された「キカイ湯跡」というプレートには、当時の店主がペンキ絵を描いたこと、その絵が大評判になって、他の銭湯でも壁に絵を描くようになったことが書かれています。
富士山は日本の象徴であり、縁起物としてたくさんの人に受け入れられていたため、色々な銭湯で描かれるようになったのでしょう。
ただ、富士山の絵が描いてある銭湯のほとんどは、東京を中心とした関東近辺に集まっており、西日本ではそれほど「銭湯=富士山」というイメージはあまりないようです。これも、ペンキ絵の発祥の地が東京だったからかもしれませんね。
ペンキの絵を眺めるのは銭湯の醍醐味ですが、最近ではスカイツリーや海外の山など、富士山以外のモチーフを描いている銭湯もあります。新しい絵との出会いを求めて銭湯めぐりをしてみるのもおもしろいですよ。
※引用元:町田忍「銭湯の謎」, ソニー・マガジンズ, 2004