ナメクジはどこからやってくる?
カタツムリとの違いはどこ?
- その他
- 2021/04/22
日中はあまり見かけることがないのに、いつの間にかどこからかやってきて、農作物や家庭菜園・ガーデニングで栽培している植物を食い荒らすナメクジ。お庭や畑の他、ときには家の中で見つけて驚く方もいるのではないでしょうか。身近な生き物である反面、その生態については意外と知られておらず、謎に包まれた部分も持っている不思議な軟体動物。しばしば不快害虫として扱われるナメクジの生態や、退治・駆除方法を写真付きで解説!また、ナメクジとカタツムリにはどんな違いがあるのか、その謎にせまります。
ナメクジとカタツムリの違い。
日本でよく見るナメクジの種類は?
ナメクジ(蛞蝓)とカタツムリ(蝸牛)は近縁で、いずれも陸産貝類に属する巻き貝の仲間。丸い巻き貝状の殻を持つのがカタツムリ、殻が無いか、殻が退化して見えないのがナメクジです。近縁ではあるものの、ナメクジとカタツムリは別の生き物。ヤドカリと同じように、殻の貝殻をナメクジに与えても、殻を身につけてカタツムリになることはありません。ちなみに、カタツムリの殻の中には内臓などがつまっているため、殻から無理やり出すと死んでしまいます。
日本で見かけるナメクジの種類はそれほど多くありません。昔からよく知られる在来種のナメクジ(フタスジナメクジ/体長約40~50mm)、森林など自然の多いところに生息する大型のヤマナメクジ(体長約100~160mm)、小型で黒っぽい体色のノハラナメクジ(体長約20mm)、外来種ですが北海道・東日本を中心に生息域を広げつつあると思われるヒョウ柄模様が特徴のマダラコウラナメクジ(体長約150mm)…などがいます。本州・四国・九州でよく見かけるポピュラーなナメクジと言えば、チャコウラナメクジ(体長約50~70mm)でしょう。もともとはヨーロッパ原産の外来種ですが、在来種のナメクジを駆逐する勢いで増えてしまいました。
ナメクジの主な生息場所。
一年中見られるナメクジの発生しやすい時期。
“おろし金”のような多数の歯のある舌を持ち、農作物やお庭の植物の花や葉や果実、コケなどを削りとるようにして食害するナメクジ。農作物を収穫する農家の方や、ガーデニングや家庭菜園を楽しむ方にとっては、割と身近な害虫かもしれません。ヌメヌメとしていて見た目が気持ち悪いことから、不快害虫として扱われることも多いです。
ナメクジは乾燥が苦手でジメジメした場所を好み、昼間は鉢の下や落ち葉の下などに身を隠しています。夜になると活動をはじめ、イチゴ、ナス、レタス、ハクサイなどの野菜や、マリーゴールド、パンジー(ビオラ)、ペチュニア、キンギョソウなど幅広い草花を食害。ときには高級な洋ランを食べて困らせることも…。かなりの量を食べるので被害には気付きやすいのですが、夜行性のため食べている姿を目撃することは少ないかもしれません。移動の際に粘液を出して歩行するため、這った部分がキラキラと白っぽく光り、その痕跡でナメクジが犯人だと見当をつけることができます。
ナメクジが卵から孵化するのは、暖かくなりはじめた春先です。住宅地周辺によく出没するチャコウラナメクジの場合は、約20~60個の卵を数回に分けて産卵。約2mmの卵から誕生し、4月頃には10mm程度の小さいナメクジを見かけるようになります。2ヵ月程度で60mm程度に成長し、この頃になると食害も目立つようになるので、被害にも気付きやすいでしょう。ナメクジは1年中見られますが、4~6月と9~10月に被害が目立ち、多湿を好むため梅雨時は特に注意が必要です。
ナメクジの特徴と、意外な一面。
実は移動距離が長い。ベジタリアンではなく雑食。
ナメクジの皮膚は、見た目の通り、とてもデリケート。皮膚はとても柔らかく、摩擦にも弱いため、自分でヌメヌメとした粘液を出してその上を歩き、自身の皮膚が傷つかないように工夫しています。夜な夜なお庭周りに出てきては、庭中の植物を食い散らかしてまた棲み処へと戻っていくナメクジたち。1日の歩行距離は4mにも及び、どういう訳か網戸などのわずかな隙間から家の中に侵入することもあり、私たちを驚かせます。
畑やお庭の様々な植物を食い荒らすナメクジですが、実は雑食。野菜のみで育ったナメクジは体重も軽く、成長が遅く産卵まで時間が掛かります。一方、動物質のものを餌として与えたナメクジの成長スピードは速く、産卵も可能です。自然界にいるナメクジもおそらく、植物だけではなく虫の死骸なども食べて、タンパク質を摂取しているものと思われます。
塩をかけるとどうなる?
ナメクジの効果的な退治・駆除方法。
ナメクジに塩をかけると、溶けていなくなると思っている方も、もしかしたらいるかもしれません。けれど、それは間違いです。私たち人間の体重のうち約60%が水分と言われていますが、ナメクジの場合は約85%が水分。加えてナメクジの皮膚は水が通りやすい構造になっているので、塩をかけると身体の水分が塩に移り、どんどん水分や粘液がなくなって縮んでしまうという訳です。ちなみに砂糖をかけても同様に縮み、小さくなったナメクジに水をかけるとある程度のサイズまでは戻ります。塩でナメクジを退治するにはかなりの量が必要になりますし、お庭の塩害などの問題も出てくるため、おすすめしません。
自宅周辺の除草や掃除をする。
ナメクジはジメジメした湿度の高い場所を好むため、自宅周辺の雑草や落ち葉を掃除したり、庭木の剪定を行ったり、風通しをよくするよう心掛けてください。日当たりがよく、風通しのよい乾燥した場所はナメクジが好まないため、個体数も減っていきます。
植木鉢やプランターを直置きしない。
鉢の下や落ち葉の下などに身を隠しているナメクジ。隠れ場所を減らすことが大切です。花や野菜を育てているプランターの下にレンガなどを置いたり、果樹や観葉植物などの植木鉢を台に載せたり、風通しをよくしてください。
虫ケア用品(殺虫剤)で対策する。
メタアルデヒドを主成分とする駆除剤の他、化学殺虫成分不使用でもナメクジの速効退治と忌避ができるタイプの駆除剤もあるので、環境に合わせてご使用ください。粒タイプやスプレータイプの他、容器タイプの毒エサ剤もあるので、お子様やペットがいるご家庭には薬剤に直接触れない容器入りがおすすめです。
ナメクジには線虫が多く寄生しており、中間宿主であるナメクジやカタツムリなどがついた生野菜を誤って食べるなどして人体に入り込むと、重篤な症状(広東住血線虫に起因する疾病など)が現れるケースがあるので注意。ナメクジやカタツムリを発見したら、「このくらい大丈夫」と放置せず、退治・駆除することが大切です。また、触れてしまった場合は石鹸・ハンドソープ等を使って手を洗ってください。