冬のお風呂は
油断できない。
お風呂のギモン
冬になるとニュースなどでよく耳にする『ヒートショック』は浴槽での溺死事故の大きな原因と言われています。
令和元年の家及び居住施設の浴槽における死亡者数は4,900人で、平成20年の3,384人と比較すると約10年間で約1.5倍に増加しています。※
※出典:消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!(令和2年11月19日)」
そんな恐ろしい事故を引き起こしてしまう可能性のある『ヒートショック』になりやすい人や、予防法・対処法をご紹介します。
そもそもヒートショックは、お風呂場で起こる現象のことを指すわけではありません。
急激な温度の変化によって血圧が急激に上下し、めまいや立ちくらみを起こしたり、ひどい場合には失神したり、心臓や血管等の疾患を引きこすことをヒートショックと言い、特に冬場の時期はどこでも起こる可能性があります。
ヒートショック=お風呂というイメージが定着しているのは、ヒートショックが特に起こりやすい場所だからという理由があります。
浴室や脱衣所などは家の北側にあることが多く、暖房設備も整っていないことが多いため、冬場の入浴では暖かい居間→寒い脱衣所・浴室→温かい湯船と急激に温度が変化するため、血圧も乱高下してヒートショックが引き起こされます。
また、トイレも同様の理由で温度変化が起こりやすいので注意が必要です。
ヒートショックになりやすい人は高齢者、高血圧や生活習慣病の持病がある人などが挙げられます。以下に該当する人はヒートショックの対策をして入浴をするようにしましょう。
またご家族に該当する人がいる人は、定期的に様子を見に行くなど、周りの人もサポートしましょう。
65歳以上の高齢者である
高血圧、糖尿病、動脈硬化の持病がある
肥満、不整脈、睡眠時無呼吸症候群がある
浴室に暖房設備がない
一番風呂・熱いお風呂が好きである
食事後・飲酒後・薬の服用後にお風呂に入ることがある
帰宅直後など体が冷えている状態でおふろに入ることが多い
30分以上湯船につかっている
上記はあくまでヒートショックになりやすい人の特徴であり、ヒートショックは誰にでも起こる可能性はあります。
「若いから大丈夫」「持病がないから安心だ」と思うのではなく、「自分もヒートショックになるかもしれない」と考えて、日々の入浴時に意識することが大切です。
ヒートショックを予防するポイントは、温度の変化をなるべく減らし、血圧が急激に変化しないようにすることです。入浴中だけでなく入浴前後も以下の対策をして、ヒートショックのリスクを減らしましょう。
温度差をなくすためには、入浴前から脱衣所や浴室を暖房器具で暖めるなどの対策が有効です。浴室は蓋をせずお湯をはれば、浴室内も同時に暖めることができます。
また、入浴中は浴室の換気扇を止めることで浴室の温度を高くできるのでおすすめです。
身体の急激な温度変化を避けるため、最初は心臓から遠い手や足などにかけ湯をしましょう。
お湯の温度が高いと、その分体温も急激に変化します。そのため、湯船の温度は40℃前後のぬるま湯にすることが推奨されています。
また、お湯につかる時間が長くなると、その分体温が上昇してしまいます。10分程度を目安にしましょう。
万が一の時に溺れないためにも、お風呂の蓋を体の前に置いておくと、寄りかかることができるので安心です。
湯船につかる時間が短くても、入浴剤を使って入浴による温浴効果をさらに高めれば、湯上がり後もポカポカが長続きします。
浴槽から出るときに急に立ち上がると血圧が急激に下がり危険です。お風呂から出るときはゆっくり立ち上がるようにしましょう。
入浴すると汗をかいて体内の水分が減るので、血栓ができやすくなったり、血圧が上がりやすくなります。脳梗塞や心筋梗塞のリスクがあがってしまうため、入浴前・入浴後はコップ一杯の水やスポーツドリンクを飲むなどの水分補給を心がけましょう。
また、水分補給はヒートショックだけでなく、入浴時の熱中症対策にもなるので一年を通して習慣にできると良いですね。
食後は消化器官に血液が集まるので、血圧が低くなります。
その直後に入浴をすると、さらに血圧が上下してヒートショックのリスクをあげてしまいます。食後一時間程度はお風呂を控えましょう。
また、飲酒も血管拡張における血圧低下、体の反応の低下を引き起こします。飲酒後はすぐにお風呂に入らないようにしましょう。
人の体温が一番安定するのは16〜19時と言われており、この時間帯に入浴するのがよいとされています。夕方に入浴、その後食事や晩酌をするのがおすすめです。
異常があった際に家族がすぐに気づけるように、家族がいる時間帯の入浴を心がけましょう。
家族と同居していない人は、万が一の時のためにスマートフォンを脱衣所に持ち込むなどして連絡をすぐに取れる状態にしておくことがおすすめです。
※上記の対策は、必ずしもヒートショックを起こさない事を保証するものではありません。
ヒートショックの症状には軽度のものから重度のものまで幅広くあります。気づいていないだけで、実はヒートショックが起きていたというケースもあるので、症状と対処法を確認しておきましょう。
軽度のヒートショックの症状では「めまい」や「立ちくらみ」などが挙げられます。
症状が出た時はその場にゆっくりとしゃがむか、可能であれば横になり、血圧が落ち着くのを待ちましょう。
立ったままや焦って動こうとすると転倒や失神の原因になってしまうので、まずは症状が落ち着くのを待ち、長引くようなら家族に助けを求めるなどの行動を取りましょう。
転倒対策として、浴室に手すりをつけるなどの対策をしておくのもおすすめです。
重度のヒートショックの症状では、「心筋梗塞」や「脳卒中」などを引き起こす可能性があります。
激しい胸の痛みや頭痛、吐き気など心筋梗塞や脳卒中が疑わしい症状が現れた場合はすぐに助けを呼びましょう。
声が出せない場合は大きな音を出したり、給湯器のリモコンの呼び出しボタンを押すなど、何かがあったかもしれないと周りの方に気づかせることが重要です。
寒い冬は特に、お風呂時間はホッとできる大切な時間です。ヒートショックに気をつけながら、お風呂タイムを楽しめるといいですね。