特定外来生物、セアカゴケグモ。
公園や校庭、身近な場所で見つけたら?
- クモ
- 2023/03/28
ほとんどの蜘蛛(クモ)は害虫を捕食する益虫ですが、一部の毒を持つ有害なクモには要注意です。日本に生息する毒グモのうち、セアカゴケグモは比較的発見例が多く、毎年のように話題になるので、名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。セアカゴケグモの画像と共に、生態や主な生息場所、咬まれた際の症状について紹介していきます。意外と身近な場所でも発見されるので、対処法や駆除方法について学んでおきましょう。
セアカゴケグモの名前の由来は?
触ると咬まれる(噛まれる)こともあるので注意。
特定外来生物にも指定されているセアカゴケグモは、ヒメグモ科・ゴケグモ属の毒グモの一種。特定外来生物とは、外来生物のうち「特定外来生物被害防止法」で指定された、人間の健康や在来種の生態系などに害を及ぼす、またはその可能性があるとされる生物のことを言います。
「背赤後家蜘蛛(セアカゴケグモ)」はその名の通り、背の赤いゴケグモで、大きな球状の腹部の背面にある赤の帯状の模様が特徴的。「後家(ゴケ)」とは未亡人のことで、交尾後に雌(メス)が雄(オス)を食べてしまい、雌のみ生き残ることが名前の由来となっているようです。夫に先立たれた未亡人というよりは、セアカゴケグモの雌の場合は自らその状況をつくっている訳ですが…。
虫の世界では割とよくあることで、セアカゴケグモは雄よりも雌のほうが大きいです。雌のサイズは7~10mmで、脚を伸ばすと3cmくらいになります。一方、雄は3~6mm程度と小型。雄は雌の半分程度でほっそりしていて、体色も濃い褐色で見た目も地味で発見されにくいです。ちなみに、セアカゴケグモの雄には毒はありません。
暑さにも寒さにも強いセアカゴケグモ。
被害のピークは夏で、一年中出現。
オーストラリア原産のセアカゴケグモは、オーストラリアやニュージーランドから東南アジアにかけて広く分布。もともと日本にはいなかった外来種ですが、日本に輸出される資材・コンテナ等に付着し、日本国内に侵入・定着したと考えられています。1995年11月に大阪府高石市で初めて発見されて以降、大阪府や兵庫県、その後も範囲を広げ、 未発見地域の3県を除く44都道府県で生息が確認されています(2018年8月現在)。
セアカゴケグモはオーストラリア原産の種であるにも関わらず、気候の異なる日本にも、いつの間にか居ついてしまいました。オーストラリアでの繁殖期は12月から1月の向こうでいう盛夏、日本では6月から8月にかけての暑い時期が繁殖期です。セアカゴケグモによる咬傷例が報告される時期は、日本では主に6~10月。日本に生息するセアカゴケグモに咬まれた場合、ほとんどは軽傷ですが、稀に重症化することも…。発生のピークは夏と言われていますが、10℃を下回る環境でも産卵可能で、冬も含めて1年中油断はできません。
セアカゴケグモの雌は卵嚢(らんのう)と呼ばれる“卵が入っている袋“を3~4つ程度作ります。卵のうのサイズは直径1cm程度で、淡い褐色の球形です。その中に、60~200個もの卵が入っています。ちなみに生まれたばかりのセアカゴケグモは体長2mm程度しかなく、この時点では雄と雌を見分けることはできません。1齢幼虫は卵のうの中で育ち、脱皮して2齢幼虫になってから外に出てきます。1匹いたら近くに複数いる可能性もあるので、注意深く確認しましょう。
セアカゴケグモはどんな場所にいる?
雨風のあたらない狭い隙間のような場所に巣を作るセアカゴケグモ。巣といっても、ジョロウグモ等のいわゆる「造網型」のクモのように綺麗なカタチのクモの巣をはる訳ではありません。セアカゴケグモの場合は、低い位置に、不規則な網を張るので、はじめは巣と気付かないこともあるでしょう。日当たりがよく隙間がある場所、コンクリート等の人工的なものを好む傾向にあります。例えばどのような場所に生息しているかというと…?
- セアカゴケグモの主な生息場所
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- 公園のベンチの下
- 鉢植えやプランターの下
- エアコンの室外機の物陰
- 道路側溝の蓋や裏側
- 駐車場周辺
- ガードレールの支柱
- 墓石の隙間
- 石垣・コンクリート塀の下部
…等、エサとなる昆虫を捉えやすいような場所
小学校や中学校等の校庭でセアカゴケグモが発見され、新聞やニュース等で取り上げられることも。また、公園のベンチに座ったときに意図せず手で触れてしまって咬まれたり、庭に置きっぱなしにしていた靴の中に隠れていたことに気付かず、履いた時に咬まれてしまったりすることもあるようです。
セアカゴケグモを発見したらどうする?
咬まれた(噛まれた)ときの主な症状と対処法は?
黒いカラダに赤い模様で、丸々としていてツヤがあり、毒々しい見た目のセアカゴケグモの雌。毒はありますが、セアカゴケグモやハイイロゴケグモ等のゴケグモ類は攻撃性はそれほどないので、素手で触れる等して刺激しなければ基本的に刺されることはありません。セアカゴケグモや似ているクモを見つけても、決して触れないようにしましょう。そのまま放置して繁殖してしまうと危険なので、見つけ次第、退治・駆除することが大切です。毒グモも、一般的なクモ用の虫ケア用品(殺虫剤)またはクモ類も対象になっている不快害虫用エアゾール等で駆除できます。また、近くに巣や卵がないか確認し、見つけた場合は駆除してください。
セアカゴケグモの雌に咬まれると(噛まれると)、針で刺されたような激しい痛みが生じ、局所の腫れ、嘔吐、めまい等の症状が見られます。日本では軽傷のことが多いので、まずは慌てずに落ち着いて、刺咬部の毒を洗い流して安静にしてください。汗が多く出る場合は水分補給も忘れずに。稀に重症化するケースもあり、治療が遅れると血圧上昇や呼吸困難、震えが起こる等の症状が出ることもあるので、念のため医療機関を受診し、その際にセアカゴケグモに咬まれたことを報告するようにしましょう。
クモに咬まれたら
クモに咬まれた症状や写真、注意点などはこちらから。
外来種にも関わらず、いつの間にか日本にも定着し、全国各地で発見されるようになってしまったセアカゴケグモやクロゴケグモ等の毒グモたち。公園や駐車場でも発見されるので、意外と身近な存在かもしれません。特に、発生が増える夏は要注意。見つけ次第、家庭用のエアゾール等で退治・駆除して、繁殖を拡大させないようにしましょう。