洋ラン(蘭)を自宅で育てるには?
枯れないために注意すべきポイント。
豪華な花の代名詞とも言えるラン(蘭)。一輪咲いているだけで高級感を与えてくれるので、お祝いの場や贈り物によく用いられますよね。ただプレゼントでいただいた時、「他の花々と違って育てるのが難しそう…」と思ってしまう人も少なくないのでは?ランは種類が多く育て方や適した環境は様々ですが、性質を知っておけば、育てるのはそれほど難しくありません。日本で馴染み深い種類の洋ランについて、育て方のポイントをまとめました。
野菜・花・果樹 育て方2020/03/26
洋ラン(蘭)ってどんな花?
洋ランの特徴と生態について
普段目にすることが多い鉢花の「洋ラン」は、明治以降に欧米から渡ってきたラン科の花の総称であり、「洋ラン」という名前の花がある訳ではありません。多くは熱帯から亜熱帯地方が原産で、濃いピンクや白・黄色など花色が鮮やかで見栄えのする花が特徴です。これに対して日本に自生しているランなどは、花が小さく花色も薄いものが多く、洋ランと区別して「東洋ラン」と呼ばれています。
洋ランを上手に育てるには、そのランが育ちやすい環境を知り、それを再現することが近道になります。洋ランの仲間は基本的に、乾燥した気候と寒さが苦手です。対策として、乾燥する時期は霧吹きなどで湿度を保つように気を配り、寒い冬は暖かい室内に移動させます。一方で夏の強い日差しでは葉が焼けてしまうため、日差しを調節することもお忘れなく。適度に日光の量を調節できる「遮光ネット」を活用するのも良いですよ。
他の花に比べて、洋ランの肥料の量は少なめにします。また施す場合は、成長期の春~秋の間だけにしましょう。
洋ランの種類
ランの種類は非常に豊富で、世界で2万以上の品種があると言われています。贈答用に好まれ1年中見られるランですが、日本の園芸店で一般的に扱われる種類はそれほど多くありません。お祝い事や引っ越しのギフトとして定番の胡蝶蘭(コチョウラン)、甘い香りとゴージャスな見た目で「洋ランの女王」とも呼ばれているカトレア、花もちが良くピンク色の花が母の日ギフトにも使われるデンドロビウム、贈り物として園芸好きに人気のシンビジウム。この4種が、日本で馴染み深く、比較的ポピュラーな洋ランと言えるでしょう。
日本でポピュラーな洋ラン4種
胡蝶蘭(コチョウラン/ファレノプシス)を育てるポイント
蝶が舞っているような花の形からその名前が付けられた、胡蝶蘭(コチョウラン)=学名ファレノプシス。東南アジアが原産で、大きな白やピンクの花がよく知られていますが、黄色や紫、斑点入りなど、実は種類が豊富。育てやすい小型のミニ・ミディタイプもありますので、好みのものを選んでください。
育て方のポイント
プレゼントでいただいたものを育てるなら、包まれていたラッピングなどは外しておきます。花は半分くらいが咲き終わったら、株の負担を減らして翌年にも花を咲かせるために、茎の元の部分から切り取っておきましょう。
屋内の窓際など明るい場所に置き、できるだけ長い時間日光が当たるようにしてください。強い日差しでは屋内でも葉焼けを起こしてしまうことがあるので、真夏はレースカーテン越しに日を当てるなどして、直射日光を避ける工夫をしましょう。
気をつけたいのは水やりで、胡蝶蘭をダメにしてしまう原因の多くが、水のやり過ぎによる根腐れです。鉢植えの表面に敷かれた水苔を指で押してみて、表面が完全に乾いた時が水やりのタイミングです 。また受け皿に水が溜まったままにしておくと、根腐れの原因となりますので注意してください。
発生しやすい病害虫:ハダニ、カイガラムシ、ナメクジ
カトレア(カトレヤ)を育てるポイント
甘い香りとゴージャスな見た目で「洋ランの女王」と呼ばれているカトレア(カトレヤ)は、中南米が原産地。花色は白、ピンク、赤、オレンジ、黄、緑、紫、茶など実に多彩です。優美な印象があるカトレアですが、木の枝や岩の上に根を下ろして成長し、自分で養分を蓄えて育つことができる、生命力の強いランでもあります。特徴はバルブと呼ばれる膨らんだ茎と、肉厚の葉。交配によって新しい品種が次々と誕生していて、人気が高く愛好家が多い洋ランです。
育て方のポイント
カトレアは寒さに弱いので、鉢植えにして1年を通し暖かい場所で栽培してください。また日光が好きなので、なるべく長い時間日差しに当てるようにするのがポイントです。春になり気温が15℃を超える頃になったら、屋外に出してあげましょう。ただし、直射日光で葉焼けしないように気を付けて。逆に秋も半ばを過ぎて気温が15℃を下回るようになったら、本格的な寒さが来る前に室内の明るい場所へ移動させます。
水やりは、基本的には「乾いてからたっぷりと」ですが、状態によって水の与え方が違ってくるので、株をよく観察するようにします。夏から秋の初めまではこまめに与え、秋の終わりから冬は比較的乾かし気味にするなど、メリハリをつけること。また2年に1回は忘れずに植え替えをしましょう。
発生しやすい病害虫:ウイルス病、アブラムシ、カイガラムシ、ナメクジ
デンドロビウムを育てるポイント
ギリシャ語で「樹上に生きる」という意味を持つデンドロビウム。ピンク、赤紫、黄、オレンジなど鮮やかな花を、太い茎状のバルブに次々と咲かせる豪華な見た目が魅力です。特にデンドロビウム属の中でもノビル系と言われる種類は、花付きが良く、比較的丈夫で育てやすいため人気があります。
育て方のポイント
花付きを良くするためにも、できるだけ日光に当ててあげましょう。耐寒性がある丈夫なランですが、4月から11月頃までは屋外で育て、10℃を下回る時期になったら窓辺など室内の明るい場所に移動させてください。
デンドロビウムの水やりは春から秋の間、表面が完全に乾いてからたっぷりと与えるようにします。冬の間や梅雨の期間は鉢内が乾きにくいので、水やりは控えめに。また生育期の5~7月以外は肥料をそれほど必要としません。肥料を与えすぎると花芽がつきにくくなるため、注意が必要です。
発生しやすい病害虫:ハダニ、カイガラムシ、ナメクジ
シンビジウムを育てるポイント
アジアから東南アジア、オセアニアにかけて広く自生しています。暑さにも寒さにも強く、何ヵ月もの間花を咲かせることができるため、初心者の方にも比較的育てやすいタイプです。白、ピンク、オレンジ、黄、緑、茶色など、見た目もゴージャスでカラフル。良い香りのする種類や、小型の品種など様々なシンビジウムがあるので、自分に合った一鉢が見つかるはず。
育て方のポイント
春~秋の間は、日当たりと風通しの良い屋外で育てるのがおすすめ。真夏は直射日光や西日で葉焼けしてしまわないように、木陰に置いたり、遮光ネットを活用したりしましょう。冬の間は屋内に入れ、日当たりの良い場所で育てます。乾燥している時は、霧吹きや加湿器を活用するなどして、湿度を保つようにしてください。
水やりは、春から夏にかけては水切れしないように気を付け、秋から冬にかけては表面が乾いてから数日おきにたっぷりと与えます。肥料を与え過ぎると葉枯れや根が傷む原因になるため、春に施すのみにしておきましょう。
発生しやすい病害虫:ハダニ、アブラムシ、カイガラムシ、ナメクジ
いかがでしたか?見た目が豪華で手がかかりそうな洋ランですが、育て方の基本を知っておけばそれほど難しく考える心配はありません。虫や病気を抑えるスプレーを使うと、もっと簡単にキレイな花が育てられますよ。贈り物でいただいた鉢があるなら、来年も元気に花が咲くように、育ててみてはいかがでしょうか。